世界で毎日10億時間以上
視聴されるYouTube
CO2排出量は1日36,000トン以上
車で地球6,700走行する量に相当

ストリーミング動画1時間あたりのCO2排出量は36g
乗用車1kmあたりのCO2排出量は133gにて換算

emissions in ICT

インターネットのない生活が想像できないほど身近になった現代。
インターネットを含むICT分野のCO2排出量は今後急増すると予測されています。
現状を知り、日々利用しているICTが環境に及ぼす影響を考えてみましょう。

section 1. ICTとは何か

ICTとはパソコンやスマートフォン・スマートスピーカーなどのさまざまなデバイスを使用した情報処理・通信技術の総称です。ICTは動画配信・オンラインゲーム・ビデオ会議・SNSやメール以外にも、教育・介護・医療・農業・建築・防災など幅広い分野で活用されています。これらのICTサービスはデータを処理・保存するデータセンターと、データを伝送するネットワークなどの複雑なインフラストラクチャーによって支えられています。ICTインフラの構築や運用には多くの電力を必要とし、スマートフォンやサーバーなどの電子機器は、製造・輸送・廃棄・リサイクルに多くの電力が消費されCO2(二酸化炭素)を排出します。ICTはあらゆる産業分野のCO2排出問題を解決すると言われていますが、ICT自体が大きなCO2排出源であるという事実はあまり認識されていません。

ICTイラスト

section 2. ICT分野のCO2排出量

ICT分野のCO2排出量は航空業界と同程度であり、世界のCO2総排出量の約2.1〜3.9%を占めるとされています。ICTのCO2排出量を検証するには、電力消費量と電力供給源に分けて考える必要があります。

section 2.1. 電力消費量

電力消費量についてはICT需要の動向と、エネルギー効率の改善状況を確認しましょう。まずはICT需要の動向から順に見ていきます。

section 2.1.1. ICT需要の急増

インターネット利用者数の増加と、一人当たりのデータ通信量および処理量の増加から、ICT需要は指数関数的に増えています。

インターネット利用者数の増加

2018年に39億人(総人口比51%)であったインターネットユーザーの総数は、2023年までに53億人(総人口比66%)に達すると予測されています。これは毎日約80万人増加するペースです。

インターネット人口のグラフ
データ通信量の増加
手軽さがもたらす需要拡大

スマートフォンで簡単にインターネットにアクセスできるようになり、その手軽さから需要が拡大しています。特にストリーミング動画とオンラインゲームの増加が顕著で、2017年から2022年にかけてストリーミング動画は4倍、オンラインゲームは9倍のデータ通信量になると予測されています。

データ消費量のグラフ
政府や行政機関によるICT推進

ICTによるデジタル化は利便性向上やコスト削減に加え、リモートワークによる通勤の減少や、ペーパーレスによる紙資源の削減など、他の産業部門のCO2排出削減に有効な手段であると高く評価されています。日本でもICT成長戦略が立てられ、国や自治体でデジタル化が推進されてきました。また2020年には新型コロナウイルスの影響によりデジタル化がさらに加速。国際エネルギー機関(IEA)によると世界的なロックダウンのピークだった2020年2月から4月の間に、ストリーミング動画・ビデオ会議・オンラインゲーム・ソーシャルネットワークによって、世界のデータ通信量は約40%増加しました。このコロナ禍でのデジタルシフトは不可逆的であり、なおかつ加速するとみられています。

処理量の増加
ICTの新興技術による処理量の増加

IoT・仮想通貨・人工知能(AI)・5Gネットワーク・バーチャルリアリティなどの新興技術は、さまざまな公共の利益をもたらすため莫大な投資が行われています。一方でこれら新興技術の消費電力は非常に多く、ICT分野のCO2排出を大幅に増加させる可能性があります。

  • 外出先からスマートフォンなどを通じて自宅のエアコンや洗濯機などを操作することができるIoTは近年急速に普及。全世界のIoTの接続数は2019年の120億から2025年には250億に倍増する見込み
  • 仮想通貨を獲得するマイニングと呼ばれる作業は長時間にわたり多数のコンピューターを稼働させ、2019年には世界の電力使用量の0.2~0.3%を消費した
  • AIにおける機械学習は、1つの大きな言語モデルをトレーニングする際に約300トンのCO2を排出すると試算される。これは飛行機でニューヨークと北京を125回往復する際の排出量に相当

section 2.1.2. 追いつかないエネルギー効率の改善

ICT需要の急増にもかかわらず今のところICTの電力消費量は横ばいで推移しています。これは非常に効率的な大規模クラウドデータセンターであるハイパースケールデータセンターへのシフトや、ITハードウェア・ネットワークの大幅なエネルギー効率向上により、これまでの需要の伸びを相殺してきたためです。しかしこのエネルギー効率の改善スピードは今後減速する可能性があり、このままでは今後の需要の急増にエネルギー効率の改善が追いつかない可能性が大きいとされています。2030年のICT分野における電力消費量は世界の総電力消費量の21%に達するという予測もあります。こうしたリスクを回避するためには、従来のコンピュータとは別次元の効率化をもたらすといわれる量子コンピュータが期待されますが、まだ技術的なハードルが高く、実用化には時間がかかるようです。

電力消費量のグラフ

section 2.2. 電力供給源

ここからは電力供給源について見ていきましょう。電力消費量が大幅に増加したとしても、電力供給源のCO2排出量を抑制できれば大きな問題にはなりません。発電時にCO2を排出しない再生可能エネルギーへの移行状況について確認してみましょう。

section 2.2.1. 再生可能エネルギー移行への課題

発電量が天候により左右される風力や太陽光発電は変動分を他のエネルギーで補う必要があり、現状では多くの場合、出力調整が容易な化石燃料によるエネルギーが使用されています。全ての電力を再エネに移行するには電力系統の強化や、大容量蓄電池の開発が必要になります。大容量蓄電池については技術的には確立されているものの現時点では現実的なコストで大量生産できる段階にはないようです。大手IT企業の多くは再エネ比率100%を目標に掲げていますが、これはすべての電力を一日中再エネのみで賄うという意味ではなく、環境価値を再エネ発電事業者から購入することで排出量を相殺する仕組みを利用しています。この仕組みは再エネ市場を拡大させる効果があるため積極的に導入を進める企業が増えていますが、一方で実際に再エネで全ての電力を賄うことは難しいのが現状です。

section 3. 今後の削減目標

ICT需要は指数関数的に増え、エネルギー効率の改善スピードは減速しつつあることから、電力需要は今後増大するとみられます。また電力供給における再生可能エネルギーへのシフトも簡単には進まないことから、今後のICT分野のCO2排出量は急増すると予測されています。こうしたことから国際連合の専門機関の一つであるITU(国際電気通信連合)は、ICT業界に対し2020年から2030年までに温室効果ガスの排出を45%削減するよう求めました。これは「世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して1.5℃に抑える」パリ協定の目標を達成するために算出されたものです。この削減目標を実現するにはエネルギー効率の更なる向上、再生可能エネルギーへの切り替えに加え、ユーザーの環境意識の向上が必要であるとしています。

section 4. 私たちができること

持続可能な社会を実現するために私たちができることは、インターネットを含むICTが及ぼす地球環境への影響を意識することです。消費者である私たちが現状を正しく理解し関心を持つことで、近年よく聞かれる「脱炭素」や「カーボンニュートラル」などの企業や政府の取り組みを評価することができます。その結果社会的な気運が高まり、エネルギー効率向上や大容量蓄電池の実用化、再生可能エネルギーの導入拡大に向けて、企業や政府によるさらなる投資を加速させる後押しになると考えます。

section 4.1. 個人でできる対策

日本人は1日平均4時間25分もインターネットを利用していると言われています。自分の利用状況を見直し無駄があれば省きましょう。個人でできる範囲では以下のような対策があげられます。このような対策をとりながら、毎日のICT利用が及ぼす影響を意識してみましょう。

  • ストリーミング動画の自動再生をオフ
  • ストリーミング動画をBGMとして利用しない
  • ストリーミング動画は高解像度ではなく標準で再生
  • ビデオ会議のモニターをオフ
  • よく聴く音楽はダウンロードして再生
  • 不要なデータの自動クラウドバックアップを停止
  • 不要なメール配信を停止
  • スマホなど電子機器の買い替えサイクルをのばす

ICTは他の産業部門のCO2排出を削減することができる必要不可欠な技術です。
AIを利用して膨大なデータを分析し気候変動を予測して対策を立てることも可能です。
社会が最大限の利益を享受しつつICT自体のCO2排出量の問題を認識し、
このマイナスの影響を最小限に抑えることで、より良い世界をつくりましょう。

SDGsを考える

SDGsとは2015年に国連が採択した、持続可能でより良い世界を目指す国際目標です。17の目標から構成されており、それぞれの目標は互いに繋がり影響を及ぼし合うと言われています。今回取り上げたCO2排出量の課題は「13 気候変動に具体的な対策を」に含まれます。気候変動の影響範囲はとても広く、1・2・3・6・7・14・15・16の目標達成にも大きく影響します。影響範囲が広いということは私たちの一歩が与える影響もそれだけ大きいということです。世界のあらゆる課題をカテゴライズしたSDGsを知り、それぞれの課題解決について考えていくことで私たちにもできることが広がります。次のSDGsのページでは取り組み事例を参考に、SDGsとの向き合い方を探っていきます。一緒にSDGsについて考えてみましょう。

SDGs 17の目標